みまもりコラム
介護付き有料老人ホームの費用に介護保険は適用できる?仕組みや負担を軽減する方法を解説

はじめに
介護付き有料老人ホームは、家族や本人にとって、快適で安全な老後生活を支える大切な選択肢です。しかし、その費用は少なくなく、多くの人が「介護保険の適用範囲」を気にします。この介護保険は、入居時の経済的負担を大幅に軽減するための強力なサポートですが、すべてのサービスが保険でカバーされるわけではありません。どのサービスが保険の対象となり、どこまでカバーされるのか、また自己負担はどう計算されるのか、詳細に理解しておくことが重要です。本記事では、介護付き有料老人ホームでの介護保険適用の仕組みを徹底解説し、賢く費用を管理するための方法をご紹介します。
Table of Contents
介護付き有料老人ホームにおける介護保険の適用範囲

介護付き有料老人ホームでは、一定の介護サービスに対して介護保険を適用することができます。利用者にとって、介護費用の負担を軽減するための重要な制度であり、どのサービスが保険でカバーされるのかを正確に把握しておくことが大切です。以下では、適用されるサービスや条件について詳しく解説します。
介護保険が適用されるサービス
介護付き有料老人ホームで提供される主なサービスの中には、介護保険が適用されるものが多く含まれています。これらのサービスは「特定施設入居者生活介護」として認められており、以下のような内容が対象となります。
- 入浴介助: 高齢者が安全に入浴できるようサポートします。
- 排泄介助: トイレやおむつ交換など、排泄に関するサポートを行います。
- 食事介助: 食事の準備や、食べる際のサポートを提供します。
- 生活支援: 洗濯や掃除といった日常生活に必要なサポートが含まれます。
- 機能訓練: リハビリテーションや機能回復を目的とした訓練も行われます。
- 療養上の世話: 医療的なケアが必要な場合に、療養生活をサポートします。
- 生活に関する相談及び助言: 日常生活で生じる悩みや問題について、相談や助言を行います。
- 利用者や家族からの相談対応: 施設に入居する利用者や、その家族からの問い合わせや相談にも対応します。
適用される条件
介護保険の適用を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。主な条件としては以下の通りです。
- 要介護認定の取得
介護保険が適用されるためには、まず市町村に対して要介護認定を申請する必要があります。これは、利用者の身体状況や介護の必要度を評価し、要支援や要介護のレベルを認定する制度です。 - 年齢条件
- 65歳以上(第1号被保険者):年齢が65歳を超えると、原因を問わず介護保険の対象となります。
- 40歳以上65歳未満(第2号被保険者):この場合、特定の疾病が原因で介護が必要な場合に限り、介護保険が適用されます。
これらの条件を満たすことで、介護保険を利用してサービスを受けることが可能となります。
適用されないサービス
介護保険が適用されないサービスも存在します。たとえば、以下のような内容は自己負担となります。
- 買い物の代行: 日常の買い物代行は保険適用外です。
- 外出時の付き添い: 医療機関や行政手続きなど、外出に必要な付き添いは対象外となります。
- 居室への食事配膳費用: 食事そのものの費用は対象外となる場合があります。
また、施設が提供する独自のサービスについても、介護保険の適用外となるケースがあるため、施設を選ぶ際には事前に確認しておくことが大切です。
自己負担額の計算方法と決定基準
介護付き有料老人ホームを利用する際の自己負担額は、さまざまな要素に基づいて計算されます。以下にその計算方法と具体的な目安について説明します。
自己負担額の計算方法
- 介護保険の負担割合
介護保険を利用する際、利用者の所得に応じて自己負担割合が1割、2割、または3割に設定されます。これにより、介護サービスの費用の一部を利用者が負担します。 - 要介護度
要介護度に応じて、利用できるサービスの支給限度額が決定されます。要介護度が高いほど、限度額が高く設定されるため、利用できるサービス量も増えます。 - 利用するサービスの種類と量
介護保険でカバーされるサービスの範囲内であれば、その利用分に対して自己負担が発生しますが、支給限度額を超える分は全額自己負担となります。
負担割合の決定基準
1割負担が基本ですが、所得に応じて2割や3割の負担となる場合があります。以下にその基準を示します。
- 1割負担: 基本的な負担割合
- 2割負担: 年収が220万円以上で、かつ年金収入とその他の所得が280万円以上340万円未満の方
- 3割負担: 年収が340万円以上の方
追加費用
介護保険でカバーされる範囲外のサービスや支給限度額を超えるサービスを利用する場合には、追加の自己負担が発生します。これには、食費、居住費、日常生活費などが含まれることが一般的です。
介護付き有料老人ホームを選ぶ際は、自己負担額や追加費用を事前に確認し、利用するサービスの範囲や支給限度額を考慮して、最適なプランを選ぶことが重要です。
介護保険適用サービスの申請方法
介護保険の適用サービスを利用するためには、まず申請を行う必要があります。この章では、申請の流れを具体的に説明します。介護保険をうまく活用して、負担を軽減するための最初のステップとして、しっかりと手続きを進めていきましょう。
申請の流れ
介護保険の適用サービスを受けるには、以下の手順を踏んで申請します。
1. 市区町村窓口での申請
まずは、居住地の市区町村窓口で介護保険の申請を行います。地域包括支援センターでも手続きを代行してもらえる場合があるので、事前に確認しておくと便利です。この際、必要な書類や本人確認書類を持参することを忘れずにしましょう。
2. 要支援・介護認定の調査と判定
申請が受理されると、調査員が自宅に訪問し、申請者の生活状況や身体状態の調査を行います。また、申請者の家族やかかりつけ医への聞き取り調査も実施されます。この調査結果をもとに、自治体が申請者の要支援度や要介護度を判定します。
3. 主治医意見書の作成
調査と並行して、自治体がかかりつけ医に依頼して意見書を作成します。もし主治医がいない場合、指定された医療機関で診断を受ける必要があります。この意見書も、介護認定の重要な資料となります。
4. 審査・判定
介護認定審査会が、調査結果と主治医の意見書をもとに、要支援・要介護度を決定します。ここで、サービスの種類や支給限度額が決まるため、この段階が非常に重要です。
5. 認定結果の通知
審査の結果は、申請者に文書で通知されます。通常、申請から結果が届くまでに30日程度かかることが一般的です。
サービス利用開始
サービスを利用する際には、介護保険被保険者証と介護保険負担割合証をサービス提供事業者に提示します。これにより、介護保険が適用された料金でサービスを受けられます。
サービス提供事業者が必要な手続きを完了すると、ケアプランに基づいたサービスの提供が開始されます。訪問介護やデイサービス、入所施設の利用など、計画に基づいて利用するサービスがスタートします。
注意点
- 申請から認定までの期間
介護保険の申請から認定結果の通知まで、通常30日程度かかります。この間にサービスを利用する場合もありますが、後から介護保険が適用される場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。 - 要介護度の見直し
要介護度は定期的に見直され、申請者の状態に応じて再調査が行われます。状態が変化した場合は、再申請が必要となる場合もあります。 - 早めの相談をおすすめ
介護保険サービスを利用するにあたっては、できるだけ早めに市区町村や地域包括支援センターに相談することをおすすめします。早期の相談により、スムーズなサービス利用が可能になります。
介護保険の適用サービスの申請は、初めての方にとっては複雑に感じるかもしれませんが、自治体や地域包括支援センターのサポートを受けながら進めることで、スムーズに進行します。申請からケアプラン作成、サービス利用までの流れを押さえ、必要なサポートを受ける準備を整えていきましょう。
介護保険を上手に活用して負担を軽減する方法
介護付き有料老人ホームを利用する際、介護保険を上手に活用することで、経済的な負担を軽減することが可能です。この章では、介護保険を効果的に活用するための具体的な方法をいくつかご紹介します。これらの制度を理解し、活用することで、介護費用を大幅に抑えることができるでしょう。
1. 負担限度額認定制度の活用
介護施設やショートステイを利用する際、食費や居住費は基本的に自己負担となりますが、介護保険負担限度額認定制度を利用することで、この負担を軽減できます。この制度は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設で適用されます。所得に応じて段階的に負担が決まり、条件を満たすと「介護保険負担限度額認定証」が交付されます。
- 条件:世帯全員が住民税非課税であることが必要です。
- 対象施設:特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院などが対象です。
この制度を利用することで、介護施設の入居時にかかる食費や居住費を抑えることができ、経済的な負担が大幅に軽減されます。
2. 所得に応じた負担段階の確認
負担限度額認定制度は、所得に応じて3段階に分かれており、所得の状況に応じて負担額が異なります。第1段階から第3段階までのどの段階に該当するかを確認し、それに基づいて適切な軽減を受けることが重要です。
- 第1段階:住民税非課税で、年金収入が低い場合などに該当。
- 第2段階:住民税非課税だが、年金収入が一定額を超える場合。
- 第3段階:住民税非課税ではないが、介護保険の自己負担限度額を下回る場合。
所得に応じた適切な段階での軽減措置を受けることで、負担を効果的に減らすことができます。
3. 高額介護サービス費制度の利用
介護サービスを多く利用する場合、1か月の介護サービス利用料が一定額を超えると、高額介護サービス費制度を利用して、超過分が後から払い戻されます。この制度は、所得に応じて自己負担の上限額が設定されており、特に長期間にわたって介護サービスを利用する方にとって非常に有用です。
- 利用方法:サービスの利用料が上限額を超えた場合、自治体に申請を行うことで、超過分が払い戻されます。
この制度を活用することで、月々の介護サービス費用を抑え、家計への負担を減らすことが可能です。
4. 複合的な軽減制度の活用
介護保険には、複数の軽減制度が用意されており、これらを組み合わせて利用することができます。代表的なものとして、以下の制度が挙げられます。
- 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
- 高額介護サービス費
- 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
これらの制度を複合的に活用することで、さらに負担を軽減できる場合があります。各制度の詳細や適用条件を確認し、状況に応じて最適な制度を利用しましょう。
5. 定期的な要介護度の見直し
介護サービスの利用において、定期的に要介護度の見直しを申請することも重要です。身体の状態が変化した場合や、介護の負担が増加した際には、要介護度を見直すことで、より適切なサービスを受けられるようになります。
- 申請方法:地域包括支援センターや市区町村の窓口で、状態が変わった際に申請が可能です。
適切な要介護度でサービスを受けることにより、無駄な負担を避け、必要なサポートを受けられるようになります。
6. 地域包括支援センターの活用
介護保険制度や介護サービスに関する相談は、地域包括支援センターを活用することが有効です。専門家が介護保険の適用範囲や、軽減制度の利用方法についてアドバイスを行ってくれます。
- 利用の流れ:最寄りの地域包括支援センターに問い合わせ、相談を行うことで、的確なサポートを受けることができます。
介護保険を最大限に活用するためには、地域包括支援センターなどの専門機関を頼ることも大切です。
7. 申請手続きの確実な実施
負担軽減制度を利用するには、必ず申請手続きを行う必要があります。「介護保険負担限度額認定申請書」などの必要書類を確実に提出し、手続きを進めましょう。また、制度の利用には期限があるため、更新手続きや申請時期にも注意が必要です。
- 必要書類:介護保険負担限度額認定申請書、住民税非課税証明書などが求められます。
申請手続きを確実に行うことで、スムーズに制度の恩恵を受けることができます。
介護保険を上手に活用することで、介護費用の負担を大きく軽減することが可能です。負担限度額認定制度や高額介護サービス費制度など、複数の軽減制度を組み合わせて利用することで、さらに経済的な負担を抑えることができます。地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談しながら、最適な方法で介護サービスを活用していきましょう。
介護保険以外の補助制度や助成金の活用方法

介護保険の範囲外であっても、各種の補助制度や助成金を活用することで、介護にかかる経済的な負担を軽減できる方法がいくつかあります。市区町村が提供する独自のサービスや民間企業の介護保険外サービスなど、多様な選択肢を上手に活用することで、より質の高いケアを受けることが可能です。この章では、介護保険以外の補助制度や助成金を活用するための具体的な方法について紹介します。
1. 市区町村独自のサービス
市区町村が独自に提供する介護保険外サービスは、要介護者や一人暮らしの高齢者、高齢者のみの世帯を対象に提供されることが多いです。各市区町村によってサービス内容や利用条件、料金は異なるため、地域に合ったサービスを選択することが大切です。
- 例:
- おむつや寝具の提供、訪問理美容サービス、配食サービスなど
- 費用の目安:訪問理美容サービスの場合、1回500~2,500円程度の自己負担が必要です。
市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談することで、利用可能なサービスの詳細を知ることができます。また、広報誌や市区町村の公式ウェブサイトでも、最新の情報が公開されていることが多いので、定期的な確認が推奨されます。
2. 総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)
総合事業は、2017年4月に全国でスタートした介護予防と日常生活支援を目的とした地域支援事業の一つです。要支援者や高齢者の生活機能維持を支援するために、市区町村が地域の特性に合わせてサービスを提供しています。所得に応じて、サービス利用料の1割~3割が自己負担となります。
- 利用対象者:要支援者や、基本チェックリストで該当とされた人が利用可能です。
- サービス例:
- 訪問による家事援助や通所によるレクリエーションなど
- 費用の目安:訪問生活援助は1回200~250円、通所による活動援助は300~400円が自己負担の目安です。
この事業の利用にあたっては、地域包括支援センターでの相談を通じて、利用者に最適なサービスを見つけることが重要です。
3. 社会福祉協議会やシルバー人材センターのサービス
各市区町村の社会福祉協議会やシルバー人材センターも、高齢者支援の一環として介護保険外サービスを提供しています。これらの団体が行うサービスは、多くの場合、ボランティアや地域住民による有償サービスであり、手軽に利用できるのが特徴です。
- サービス例:
- 家事援助、外出付き添い、見守りサービスなど
- 費用の目安:家事支援が1,000円/時間、外出付き添いが800円/時間程度です。
これらのサービスは、市区町村の総合事業の一部として提供されていることもあり、利用者に合わせた柔軟なサポートを提供しています。
4. 民間企業による介護保険外サービス
民間企業が提供する介護保険外サービスは、保険適用外であっても、利用者にとって有用なサポートを提供することが可能です。特に緊急時に対応できる柔軟なサービスが多く、家事代行や移送サービスなど、個別のニーズに応じた対応ができます。
- 例:
- 配食サービス:日常の食事を提供し、安否確認も行う。
- 家事代行サービス:清掃、洗濯、買い物代行など。
- 費用の目安:配食サービスは1食500~700円、家事代行サービスは3,000円前後/時間が一般的です。
このようなサービスは、インターネット検索や口コミを活用して探すことができます。また、市区町村でも地域の民間サービスの情報を提供していることがあるため、地域包括支援センターなどで確認すると良いでしょう。
5. 情報収集と組み合わせの工夫
介護保険外サービスや補助制度を最大限に活用するためには、情報収集が非常に重要です。地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、利用可能なサービスや補助金の情報を集めることで、適切な選択肢を見つけることができます。
また、介護保険サービスと介護保険外サービスの組み合わせも重要なポイントです。たとえば、介護保険サービスで提供されない家事支援や通院付き添いなどは、民間サービスや市区町村の支援を活用することで、必要なサポートを受けることができます。
6. 定期的な見直しと地域の特性を活かす
利用者の状態や地域のサービス状況は、時間の経過とともに変化するため、定期的な見直しが欠かせません。定期的にサービスを見直すことで、利用者にとって最適なケアを確保することができます。
また、地域の特性を活かしたサービス選びも重要です。地域によって提供されるサービスやサポートの内容は異なるため、地域特有のサービスを上手に活用することで、より充実したケアが受けられます。
介護保険以外にも、さまざまな補助制度や助成金を活用することで、介護にかかる負担を大きく軽減することができます。市区町村独自のサービスや民間企業の提供する介護保険外サービスなど、多様な選択肢が用意されており、利用者のニーズに合わせて適切なサービスを選ぶことが大切です。最新の情報を定期的に確認し、組み合わせを工夫することで、より質の高い介護サービスを受けることができるでしょう。
まとめ
介護付き有料老人ホームでは、介護保険を活用することで介護費用の一部が軽減されますが、適用される範囲や条件は限られています。入浴や排泄、食事などの基本的な介護サービスは保険が適用される一方、買い物代行や外出付き添いなどは自己負担が必要です。また、要介護認定の取得や所得に応じた負担割合の設定が必要です。さらに、支給限度額を超えたサービス利用や追加費用が発生する場合もあります。これらを正確に把握し、施設選びやプラン設定時に計画的に活用することで、無駄な負担を避け、安心してサービスを利用できるようにしましょう。介護付き有料老人ホームをご検討の方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。

株式会社サンケア
代表 山下裕子
私たちは、香川県さぬき市で2010年から訪問介護センターとデイサービスを運営しています。
社名「サンケア」は、「我が心で介護を行う」という思いを込めて名付けました。訪問介護やデイサービスを提供する中で、だれもが「大切な時間を自分らしく生きられるようにお支えしたい」という 思いが強くなっていきました。
「今は自立していても、不安なときには誰かに見守ってほしい」そのような方からの声が、寄り添いサービス「サンラブライン」の立ち上げのきっかけです。一人一人の人生を大切に、充実した毎日を 過ごしてもらえるようサポートしていきます。一人暮らしに不安を感じている方、一人暮らしの親を心配する方、お気軽にご相談ください。